DJI FlyCart 30とは?物流ドローンの新時代を切り拓く最新機種を徹底解説!

日本でも2022年12月にレベル4(有人地域での目視外飛行)が解禁され、規制面の整備が物流ドローン普及の追い風となりました。
従来のトラック輸送では困難な“ラストワンマイル”を、ドローンが空から補完する時代が始まりつつあります。
こうした中、ドローンメーカー世界最大手であるDJIが初の物流専用ドローン 「DJI FlyCart 30」 を発売し注目を集めています。長距離・重量物輸送に特化した大型機で、最大30kgの荷物を空輸できるパワーが特徴です。頑丈な設計と高度な安全機能を備え、貨物ケースを搭載する「貨物モード」とワイヤーで吊り下げる「ウインチモード」の2通りで荷物を運べます。
従来の輸送手段では難しかったエリアにも、空から安全かつ効率的に物資を届けることを目指した画期的なドローンです。
目次
DJI FlyCart 30とは?物流ドローンの最前線
DJI FlyCart 30の概要と特徴
近年、ドローン技術の進化によって物流業界にも革命が起きつつあります。その最前線を担うのが、DJI FlyCart 30です。DJIは言わずと知れた、世界最大手ドローンメーカー。これまでも多くの産業用ドローンの開発を進め、世に送り出してきました。
DJI FlyCart 30の特徴
- 最大30kgまでの貨物を搭載可能
- 最大飛行距離16km
- 最大速度72km/h
- 貨物ケースを搭載するモード/ワイヤーで吊り下げるウインチモードの2通りの運搬方法に対応
DJI FlyCart 30の活用が期待される理由
物流ドローンの活用が注目される背景には、以下のような物流業界全体が抱える課題があります。
- 人手不足:配送ドライバーの不足が深刻化
- 災害対応:道路が寸断された際の緊急輸送手段
- 遠隔地の配送:山岳地帯や離島への物資供給
DJI FlyCart 30は、これらの問題を解決するために開発され、すでに国内外で実証実験が進められています。
既存の輸送手段との違い
トラックやヘリコプターと比較した時のFlyCart 30の強みは、以下のような点です。
- 道路が不要:空を直線的に飛行できるため、時間短縮
- コスト削減:ヘリコプターより低コストで運用可能
- 安全性の向上:地上の交通事故リスクを回避
DJI FlyCart 30の実機レビュー!現物写真と使用感を紹介
機体デザインとサイズ感
DJI FlyCart 30の現物は、展開時に幅約3mにもなるずっしりとした機体です。その構造は8枚のプロペラを4本のアームに同軸二重で配置したマルチローターで、最大飛行速度は約72km/hに達します。機体重量も大型で、バッテリーを2本搭載した場合は全備重量が65kg近くにもなり(バッテリーなしでは約42.5kg)、安全な運用のために各種冗長システムが組み込まれています。
ファントムのプロペラと比べると大きさの違いは一目瞭然!
貨物モードとウインチモードの違い
FlyCart 30には2種類の貨物運搬方法があります。
- 貨物モード:貨物ケース(容量約70L)を直接機体に装着
- ウインチモード:ワイヤーで吊り下げ、非着陸で荷物受け渡し
下部に大型の貨物ボックスを装着した状態と、ワイヤーで荷物を吊り下げた状態の両方が公開されています。(下写真:左がウインチモード、右が貨物モード)。
貨物ケースは外寸754×472×385mmで内容積約70Lと大容量ながら、自重わずか3kgと軽量に作られており、機体下面に着脱可能です。
一方、ウインチ使用時には着陸せずに荷物の受け渡しが可能で、地表をカメラで映しつつ、荷物の投下ポイントを「AR(拡張現実)プロジェクション」機能で投下地点を正確に狙い、荷重が抜けるとフックが自動で開放される仕組みになっています。
実際の操作感や飛行性能
実際に操縦してみると、大型機ながら安定性が高く、ホバリングもスムーズ。飛行プランの設定も簡単で、自動航行による省力化が期待できます。
その巨大さゆえ、機体を折り畳んでもなかなかの存在感。
輸送時はワンボックス車(ハイエース)等の荷室でないと収まりません。
大きさが分かりやすいよう、Phantom4のバッテリーを横に置いてみましたが、でかい!
各バッテリーは約11kgもの重さがあることから、固定も含め慎重な取り扱いが求められます。
頭についている円柱の帽子みたいなのは障害物検知用のレーダーです。
操縦者は送信機から手を離さず常に目視で監視しつつも、飛行の大部分は自動で行われ、大型機とは思えない安定したホバリングと飛行性能を見せます。
DJI FlyCart 30の物流導入事例【国内・海外】
発売から日が浅いものの、DJI FlyCart 30は世界各地でさっそく物流分野への適用が始まっています。中国では2023年から先行して導入が進められ、山岳地帯の観光地での物資運搬、港湾での荷物輸送、緊急救助物資の配送などに活用されています。
たとえば山間のリゾート施設に食料を届けたり、川を挟んだ港湾間で部品を空輸したりと、従来は人力や車両で時間のかかった輸送がドローンで効率化されているのです。
山岳地域での物資輸送(エベレスト登頂支援など)
2024年4月には、ヒマラヤ山脈のエベレスト(チョモランマ)でFlyCart 30を使った世界初の物資輸送テストが行われ、大きな成果を収めました。
エベレスト基地(標高約5,300m)から第1キャンプ(約6,000m付近)まで酸素ボンベ3本と物資計15kgを12分ほどで空輸し、復路では山積したゴミを回収するという往復ミッションに成功。
ヘリコプターでも理論上可能ながら危険とコスト面で滅多に行われないルートを、ドローンが安全に担い得ることを証明した歴史的快挙です。現地協力者によれば「FlyCart 30は-15℃~5℃の気温や15m/sの強風というエベレストの過酷な条件下でも安定飛行し、任務を完遂した」とのことで、極地での新たな物流手段として期待が高まっています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000015765.html
離島や港湾での活用(緊急輸送・医薬品配送)
ヨーロッパでも山岳救助へのドローン活用が進んでいます。ポーランドのタトラ山脈では、山岳救助隊(TOPR)がFlyCart 30による救援物資輸送をテストし、夏季の飛行試験で大きな成果を上げました。
https://unofficialnetworks.com/2024/12/29/rescue-drone-delivery-system-tested-in-polands-tatra-mountains/
災害時のドローン物流(地震・豪雨などの支援)
最大40kg近い救助用機材を山頂付近まで運搬できることが確認され、捜索救助活動の迅速化に寄与すると評価されています。従来、人が何時間もかけて担ぎ上げていた装備をドローンが短時間で届けられるメリットは非常に大きく、悪天候や危険地形での人員リスクを減らす効果も期待できます。
日本国内での実証実験の最新動向
日本国内では、本格運用はこれからですが各地で実証が進められています。DJI正規代理店のセキドは、国内発売に先駆けてFlyCart 30の性能検証を開始し、標高2,900mの山小屋への物資輸送や16kmにおよぶ海岸線での長距離飛行、震災被災地での緊急搬送など、様々なシナリオでテストを重ねています。
例えば山岳地域ではヘリが着陸できない山小屋に食料を届けたり、沿岸部では孤立した集落に医薬品を運ぶなど、実務に即したデモ飛行が行われています。実証の現場からは「30kgの荷物を1km先まで届け、元の地点へ自動で戻る飛行を確認した」といった報告もあり、現実の物流ルートに組み込むための課題洗い出しが進んでいます。特に災害時の活用には関心が高く、2024年の能登半島地震では自衛隊が物資を背負って運ぶ「歩荷(ぼっか)」に頼らざるを得ない孤立集落が多く発生したことが報じられました。
こうした状況下で大型物流ドローンが普及すれば、被災地への迅速な物資補給に大きな力を発揮すると期待されています。離島・山間部の日常物資の定期配送から、大規模災害時の緊急支援まで、FlyCart 30の活躍が見込まれる場面は今後ますます広がりそうです。
DJI FlyCart 30のメリットと導入課題
物流業界におけるドローン配送の利点
- 配送時間の短縮:直線飛行による時間削減
ドローンは上空を直線的に移動できるため、陸路に比べて格段に早く荷物を届けることができます。障害物のない空路を行くことで配送の時間短縮につながり、山間部や川を挟む地域でも中継なしで一気に物資を運べます。エベレストでの実験でも、徒歩なら数日かかる道のりをわずか数分で物資輸送することに成功しており、緊急時の速達性は大きなメリットです。 - 省人化の推進:ドライバー不足を補う手段
無人機による輸送はドライバーや担ぎ手を必要としないため、物流現場の人手不足対策として期待できます。特に過疎地域や高齢化が進む地域では、配送ドライバーの確保が課題ですが、ドローンが代替手段となれば人員不足によるサービス低下を補えます。また深夜早朝の配送や長距離のルートでも、操縦者の負担を軽減しつつ安定した供給が可能です。 - 環境負荷の軽減:電動ドローンによるCO2削減
電動のドローンはガソリン車やヘリコプターに比べて運用時の排出ガスが少なく、環境に優しい輸送手段といえます。特に少量の緊急荷物を運ぶためだけにトラックを走らせたりヘリを飛ばしたりするより、ドローンなら必要最低限のエネルギーで済みます。エベレストでは本来ヘリコプターで行うと燃料消費や排出が大きい輸送を、FlyCart 30が電力のみで代替し成功しました。今後、電力の再生可能エネルギー化が進めば、ドローン物流によるカーボンフットプリント削減効果はさらに高まるでしょう。
航続距離や積載量の制約とその解決策
FlyCart 30は航続距離16kmと比較的長距離飛行が可能ですが、
- バッテリー交換
- 中継地点の設置
などの工夫が必要です。
FlyCart 30は16kmの飛行距離・30kg積載という優れた性能を持ちますが、トラック一台が運べる荷量や走行距離と比べれば限定的です。より長距離をカバーするには中継拠点を設けるか、あるいは固定翼型ドローンとの併用など工夫が必要でしょう。
重い荷物を遠方まで届ける場合はバッテリー消費も激しく、最大40kg積載時は8km程度が限界です。荷物の種類によってはドローンに向き不向きもあり、大型家具や多数の小口荷物は依然トラック輸送が勝ります。ドローン物流は万能ではなく、既存手段との使い分けやハイブリッドな輸送網の構築が求められます。
法規制や安全対策の現状と今後の課題
- 飛行許可の取得が必須
- 人口密集地での運用ルール整備
- 保険や安全基準の策定
安全性の確保: 最大30kgもの重量物を上空に運ぶため、万一の機体トラブル時には大事故につながりかねません。FlyCart 30はシステムやセンサーの二重化、異常検知時の自動パラシュート展開など安全装備を充実させていますが、それでもリスクをゼロにはできません。市街地上空での飛行には特に慎重な運用と周囲の理解が不可欠であり、万全の安全策と監視体制が求められます。
ドローン物流を本格展開するには各国の航空法規に従う必要があります。日本ではレベル4飛行が解禁されたとはいえ、許可申請や飛行計画の届け出、操縦者の資格要件などクリアすべき事項が多々あります。人口密集地での配送や夜間飛行はまだ制限が厳しく、法律面のハードルが完全になくなったわけではありません。
また、住民のプライバシーや騒音への配慮など、運用ルール作りも重要な課題です。
バッテリー管理と運用コストの課題
FlyCart 30は大型バッテリーを2本搭載
- 充電設備の確保
- 予備バッテリーの運用
大型ドローンを動かすには大容量バッテリーが不可欠で、充電インフラの整備が課題です。FlyCart 30用のバッテリーは1本で11kg・数十万円と高価な上、充電には専用充電器で最大出力7200Wと相当な電力を要します。長時間の連続運用には複数バッテリーをローテーションさせる必要があり、充電設備や予備電源(発電機等)の携行が前提となります。将来的に各地の配送拠点に高速充電ステーションを設置したり、太陽光発電との組み合わせで電源確保するなどのインフラ面の投資も必要でしょう。
FlyCart 30導入コスト課題
機体価格や維持費も現段階ではハードルです。FlyCart 30の導入費用は概算で約500万円程度で、さらに運用には高度な技能を持つオペレーターの育成や保険加入、保守点検などのコストがかかります。十分な投資回収を得るには、ある程度の運用規模や利用頻度が求められるでしょう。
特に地方自治体などが導入する場合、費用対効果を示し住民の理解を得ることも重要です。
まとめ|DJI FlyCart 30は物流の未来をどう変えるのか?
実際に触ってみた感想や各地での実証結果から、DJI FlyCart 30は物流ドローンの新たな可能性を切り拓く存在であることを感じました。空のインフラを活用して、これまで人や車両で苦労していた配送を代替・補完できれば、物流業界に大きな変革をもたらすのではないでしょうか。
もちろん安全性や運用コストなど課題は残るものの、技術革新と工夫によってそのハードルは着実に下がってきていると感じました。
今後のドローン物流市場の展望
市場の展望としては、DJIの本格参入も相まって物流ドローン分野の競争と成長はさらに加速すると見られています。既に国内外で様々な企業・自治体が実証実験やサービス導入に乗り出しており、今後数年で実用化のケースが一気に増える可能性があります。
過疎地域での日用品配送や医薬品の定期便、災害時の緊急物資輸送といったニーズからまず普及が進み、将来的には都市部近郊でのオンデマンド配送などにも広がっていくかもしれません。トラックなど従来手段とのハイブリッド運用で効率を最大化する取り組みも始まっており、新たな物流ネットワークの形が模索されています。
DJI FlyCart 30の技術進化と今後のアップデート
今後について、まず技術面ではさらなる進歩が見込まれます。DJIはFlyCart 30に年内にも4G通信機能を追加予定で、これにより見通し外でも安定した長距離飛行制御が可能になります。将来的には5Gネットワークとの連携や、AIによる自律飛行技術の発展で、より遠隔から複数機を同時管理したり、都市部でも安全に自動飛行させたりといった運用も現実味を帯びてきます。
また、Payload SDKによるサードパーティ機器の搭載拡張や、DeliveryHubプラットフォームとの連携強化など、エコシステムの充実も進むでしょう。これによりユーザー側で用途に応じたカスタマイズやシステム統合が可能となり、ドローン物流の汎用性が一段と高まると期待されます。
最後に、物流におけるドローン活用はまだ始まったばかりですが、そのインパクトは計り知れません。DJI FlyCart 30の登場は、「空飛ぶ運び屋」が現実の物流インフラになり得ることを強く示しました。今後も技術とルール整備が前進すれば、私たちの身の回りでもドローンが当たり前に荷物を届ける光景が見られるのではないでしょうか。
効率的かつ持続可能な物流を実現する一翼として、空を舞うドローンたちが新たな役割を担い始めています。その先駆けであるFlyCart 30の今後の活躍と、物流業界にもたらすイノベーションに期待が高まりまっています。
物流ドローンの新時代を切り拓くDJI FlyCart 30。あなたのビジネスに導入する準備はできていますか?
DJI FlyCart 30 実機を使った実証検証のご案内
弊社スカイシーカーでは、現在DJI FlyCart 30の実機を所有しております。
実証検証を希望される企業・団体様や購入を検討されている方は、ぜひご連絡ください。
物流ドローンの活用や DJI FlyCart 30 にご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら!
ドローンのレンタルサービスも実施中!